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[東京 1日 ロイター] マーケットは内閣不信任案の行方を注視し様子見ムードが強い。きょうの党首討論後にも提出される見通しとなっており、政治混乱を嫌い日本への投資を手控える海外勢もいるという。
可決されれば新政権誕生への期待が強まり日本株の買い材料になる可能性もあるが、政治への不信感がぬぐえないなかではプラス反応も限定的とみられている。鳩山由紀夫前首相が辞意を表明した1年前の「デジャヴュ」(既視感)を指摘する声もあった。
<1年前は鳩山前首相が辞任表明>
鳩山前首相と民主党の小沢一郎前幹事長が辞意を表明したのがほぼ1年前の6月2日。日経平均は次期政権への期待の高まりや外為市場が円安に振れたことに反応、いったんプラス圏に浮上したが、その後は外部環境への不安や政局不透明感が強まり、短期筋や米系年金筋の売りなどに押され終値ではマイナス圏に沈んだ。
今回の内閣不信任案提出の行方は不透明だが、似たようなマーケットの反応になるとの見方が多い。「有力な次期候補が乏しい。外部環境の不透明さは1年前よりも改善されているが、強力なリーダーシップを持たない首相では不安定な政治状況や厳しい財政などこれまでと同じ問題に苦しむことになる」(みずほ証券・エクイティストラテジストの瀬川剛氏)とみられているためだ。
1年前の日経平均は9711円83銭(6月1日終値)と今とほぼ同じ水準。東日本大震災からの復興というテーマはあるが、「不安定な政治」というネガティブ要因は依然として日本の重しとなっている。「政治は機能しておらず、今回の危機でそれがはっきりとした。(株は)バリュエーション面で安いとかいろいろ言われているが積極的に日本を買いたいとは思わない」(外資系証券)。海外からは相変わらず冷ややかな視線が注がれている。
1年前の辞意表明直後のマーケットの反応は、「通常であれば政治の混乱が嫌われてネガティブ材料だが、これだけ世論の批判を浴びて支持率を低下させ、市場のセンチメントにもいい影響を与えていたとはいえないだけに、株式市場では、ごく短期的にアク抜け感が出るかもしれない」(国内証券エコノミスト)、「順当にいけば次の首相は菅直人氏だが、菅首相になったところで日本の成長戦略や財政問題がより改善するとは思えず、刷新期待も乏しい」(邦銀関係者)──など名前を入れ替えればきょう聞いたコメントとしても違和感がないほどだ。政治面ではこの1年間の進歩は乏しかったと言われても仕方がない。
マーケットは政局を注目しているが、期待感は決して高くない。トヨタアセットマネジメント・チーフストラテジストの濱崎優氏は「鉱工業生産の5、6月の予測指数が前月比7─8%と大幅な上昇になったのは一日でも早く復旧したいという民間企業の必死さの表れだ。政治の不安定さが民間の足を引っ張らないよう期待したい」と述べている。
<内閣不信任案が可決された場合、金利上昇要因に>
円債市場では内閣不信任案が可決された場合、金利上昇要因になるとみられている。「5月にかけて買い進まれた分、先行き不透明感の広がりでポジションを解消しようとする動きが出て、債券売りの流れが強まるのではないか」(バークレイズキャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジスト)という。株先買い・債先売りのオペレーションが強まる可能性も指摘されている。
一方、大和証券キャピタルマーケッツの後藤良輔マーケットアナリストは「内閣不信任案が可決した場合、衆議院解散・総選挙もしくは内閣総辞職となる。いずれの場合も、政局の落ち着きどころは見出し難いだろう。否決されても与野党対立は継続する見込みで、与党内の対立は一層激化する可能性もある」と指摘。政治の空白は、震災対応の遅れによる復興需要の遅滞を招き、当面は金利上昇の抑制要因になるとしたうえで「ただし、今後予想される大規模な補正予算で国債の増発が年度後半に集中するリスクもあり、財政再建の遅れとともに嫌気されれば、徐々に金利上昇圧力が高まる展開も考えられる」と話した。
もっとも円債市場でも、メーンの材料は政治よりも景気だ。米雇用統計を控えるなかで景気減速の懸念が根強いため下値不安が広がっているわけではない。午前中の市場では「正午締め切りの10年債入札が迫り上値は重いが、米景気の減速懸念が下支えしている」(ドイツ証券の山下周チーフ金利ストラテジスト)との声が出ていた。
JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは「新規失業保険申請数なども軟調な状況が続いており、金曜日の雇用統計も市場予想に届かない結果に終わると、米国のマクロ経済見通しを本格的に下方修正する投資家が急増する可能性が高まっている」と指摘。そのうえで「夏場に向けて景気下振れのがい然性が高まってくるとすれば、さらなる金利低下余地を探る展開も視野に入れざるを得ないだろう」と話している。
<外為市場では織り込みにくいとの声も>
1年前は円売りで反応した外為市場だが、今回は織り込みにくいとの声も出ている。ムーディーズが日本の格下げ検討を発表した影響は前日で一巡。日本の政局不安についても「株式市場には重しになるものの、円相場は織り込みづらい」(国内金融機関)という。
外為市場でも主要テーマはファンダメンタルズ。きょうの市場では、米消費者信頼感指数やケース・シラー住宅価格指数などの悪化と米金利の低下が材料視された。前日に発表された弱い米経済指標を受けてドル売り地合いが継続。ドル/円はクロス円の上昇に支えられ、81円前半から半ばを小動きで推移した。ユーロはギリシャの債務問題に対する不安が後退し、対ドルで3週間ぶり高値をつけた。
ユーロ/ドルの上昇はギリシャ地元紙の報道が材料になったという。AFP通信によると、ギリシャの有力紙Ta Nea は31日、ギリシャ政府が追加の緊縮策と民営化の加速を条件に、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)との間で新たな融資を受けることで合意したと報じた。ドイツがギリシャ債務の早期再編要求を取り下げる検討を始めたと報じた前日の米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の記事も、引き続きユーロを支援した。
「結局は金利が最大のテーマ。ギリシャなど周辺国の債務問題は錯乱要因にすぎず、傾いたポジションを調整する口実でしかない」とみずほコーポレート銀行国際為替部の佐藤雅英調査役は指摘する。「ユーロ圏のGDP(国内総生産)に占める割合が10%未満の南欧諸国の債務再編や景気悪化が、ECB(欧州中央銀行)の政策判断にどの程度影響するのか。やはり目線はドイツやフランスに向いているだろう。まだ(ECBは)タカ派の姿勢を維持している」(佐藤氏)という。
(ロイターニュース 伊賀大記;編集 宮崎亜巳)
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